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【参戦記】2011 Ford Ironman World Championship
レース編
2011年10月8日土曜日。
ついにこの日”Big Saturday”がやってきた。
トライアスロンを始めて5年目。
本格的にハワイを目指して3年目。
ハワイの壁はあまりに高く、何度も跳ね返された。
2009年
2月 アイアンマン・マレーシア 体調不良とホイール破損により撃沈
4月 アイアンマン・チャイナ あと1分差でスロットに届かず
6月 アイアンマン・ジャパン パンクと連戦の疲れで撃沈
2010年
3月 アイアンマン・チャイナ 脚の故障により出場できず
7月 アイアンマン・コリア ジャパンが中止になり強豪多数参加。歯が立たず
8月 アイアンマン・カナダ 腹痛と寒さで動けなくなり自己ワースト
2011年
7月 アイアンマン・コリア スロット獲得
ようやく夢の舞台へ参加できるキップを手に入れた。
そして今日はその夢をかなえる日となる。
朝3時起床
昨晩は9時ごろには寝ることができたので睡眠は十分。
外に出て軽く準備運動とジョグ。
星が輝いている。今日は晴れだ。暑くなるかもしれない。
3時30分朝食
日本から持参したうどんとモチ、味噌汁、カステラのいつものメニュー。
ハワイへ来てからやや食べ過ぎ感があり、あまり食欲もなかったので無理に食べなかった。
4時30分
いったんナンバリングとバイクのセッティングに出発。タイミングチップがなかったためトランジッションエリアに入れず出直し。タイヤに空気を入れ、ボトルを2本セット、練り梅2本をトップチューブにくくりつける。ヘルメットとサングラスをセットし、もう一度トランジッションの長いコースを確認。準備完了。
いったんホテルに戻りスイムの準備。ワセリンを体に、ゴーグルに曇り止めを塗る。Blueseventy PZ3TXを着こむ。
5時30分
ホテル出発。プレスイムバックを預け、トランジッションエリアで待機。
エリートのスタートはエイジより30分早い6時30分。6時過ぎからはエリート選手がスイムチェックインを開始。
アメリカ国歌斉唱。厳粛なムードに包まれるとともに、歌の最後には盛り上がる。アメリカ国歌は歌っている人、聞いている人を奮い立たせる。
6時30分
キャノン砲とともにエリート選手がスタート。
エイジ選手がスイムチェックイン開始。偶然にもチームYの4名がそろうことができた。やはりチームメンバーがいることは心強い。
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6時50分
フローティングスタートのため泳ぎ始める。スタートまでの10分間は立ち泳ぎ。ブイ側の最短コースは激しいバトルが懸念されたため、外側へ行く。今年は「海に浮いているフォード車」のさらに外側に多数いたので自分もそこに陣取る。海水で多少浮くとはいえ10分の立ち泳ぎは楽ではない。だんだんつま先がつりそうになってきた。
7時00分
再度キャノン砲でエイジスタート。いよいよ今日のレースが始まった。
スタートはやはり混んでいるのでぶつかったりするが、思っていたほどのバトルはない。まわりは人だらけなのだが、みんな泳ぎがうまいのでちゃんとまっすぐ泳いでいる。あまりのひとの多さに前のブイと沖にある船が全く見えない。
さすがにハワイの海はきれいなので海の中は周りがよく見える。ヘッドアップはやめて前の人にコバンザメし自分では確認しないことに腹をくくった。前の人がコースアウトしていたらおしまいだが、ここにいる人達は泳ぎがうまいはずだ。リスクはあるがそれに賭けた。
あまりに人が多いので折り返しのブイがよくわからない。ひたすら前の人の脚についていくだけ。そうしていると朝日がまぶしくなった。右オープンで泳いでいる自分なので、朝日が当たるということは折り返して岸に向かっているとがわかった。
あとはこのまままっすぐ泳ぐだけだ。
右わきの下と腰が擦れてしみる。終わってからわかったが、右わきは擦れだが、腰はくっきり爪の跡が2本付いていた。
水深が浅くなってきたのでヘッドアップしてみると建物が見え始めている。スイムアップまでもうすぐ。ほとんどヘッドアップしていないので首や肩周りの疲労はない。
岸にたどり着き時計をみる。1時間6分。速くはないがノーウェットではこんなものか。とりあえずほとんどダメージ・疲労もなくスイムアップできたことで良しとしよう。
スイム:1時間7分14秒(年代別:62位、総合:688位)
T1:SWIM TO BIKE 3分27秒
ホースで水をかぶり、バックを受け取りテントへ。バイクシューズを履き長いトランジッションエリアを走る。MASAさんがちょうどバイクを出すところだった。タイム差はほとんどないのでいい感じか。いよいよバイクコースに出ていく。
出発してすぐは顔見世的にコナの街を走る。チームY応援団も大声で応援してくれた。やはり仲間の応援は力が湧いてくる。Palani通りの急坂を登り、いよいよQueen Kハイウェイへ。
このQueen Kを走ることをどれだけ夢見たことか。
過去の大会のDVDを何度も何度も観たし、ハワイに出た強豪達からいろんな話を聞いてきた。いまそのQueen Kを走っていると思うだけでうれしくてしょうがなかった。
最近のレースではバイク時の腹痛に悩まされてきた。今年のコリアではあまりの苦しさにバイクを降りて休んだくらいだった。朝食時に「正露丸(糖衣錠)」を飲んできたが、念のためにここでもう一度服用した。糖衣錠だったので正露丸臭さもあまりなく、結局腹痛は起きなかった。大正解か。
バイクに入ってからMASAさんが前にいるのが見えたのでその後を追った。ハワイ6回目の大ベテランなので同じようなペースで走るが得策。特に「序盤は抑えるようにした方が良い」とのアドバイスを受けていたので、無理をせずに走った。
そしたらいきなりMASAさんがもどしていた。2007年のノーマンのようだった。体調が悪そうだったので「大丈夫ですか?」と声をかけた。相当つらそうだったので先を行かせてもらった。
周りにはどんどん抜かれていく。日本人はどんどん抜かれると聞いていたので気にせずマイペースで走った。快晴で肌がじりじり焼けてくる。エイドごとに水を浴び、脱水に気をつけてスポーツドリンクをこまめにとった。
今回の補給は「ハニースティンガー」を10本ボトルに入れた。これは化学的な味があまりせず結構良かった。後半になっても飽きることなく飲むことができた。エイドにバナナがあるので固形物はほとんど持たなかった(コンビニようかんを1本のみ)。あとは「ここでジョミ」2本と「練り梅チューブ」を2本。「アミノバイタルプロ」を3本。
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アップダウンが続くQueen Kをまずまず順調に走る。40マイル地点Kawaihaeで大塚さんをはじめとするプレス陣が撮影していた。元気に手を振り通過。
意外に風がない。あとになって「2011年のレースは全く風が吹かなかった」といわれるのはさびしいので「コナウィンドを体験したい」と思っていたら、Hawi手前の坂で強烈なのが来た。ただでさえ登りなのに真向かい風、どアゲンスト。しかも長い。ゴミもとんでくる。
このあたりでMASAさんに先行される。体調が悪くても自分より速い。それにしてもどんどん抜かれる。この風の中、女子選手や60代くらいと思われる選手にも抜かれる。ようやくHawiの折り返し。長かった。
折り返して少しするとRIKIさんとすれ違う。差は10分ないくらいか。ここから脚がきつくなってきた。フラットにみえて結構アップダウンがある。後半は向かい風が多くなる。やっぱりハワイのコースは甘くない。コースが単調なだけに余計長く感じる。
我慢の走りを続ける。心拍数も130台に落ち始める。とにかくキツイ。集中力が切れ始めどんどんスローダウンしていく。白戸太郎さんをパス。調子が悪そうだ。ようやく空港がみえてきた。こんな地平線がみえる地形はなかなかないと思いながら最後の踏ん張り。トップ選手たちがランでQueen Kに来ている。ラエラート、アルサルタンの姿が見えた。
Sport Authorityの角を右折。長い長い我慢のバイクコースが終了した。
バイク:5時間39分51秒 (年代別:116位、総合:968位)
T2:BIKE TO RUN 3分8秒
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バイクから降りると右足アキレス腱が痛い。いままでここが痛くなったことはなかったので心配になる。ペダリングの問題か。しょうがないので我慢して走る。ランになってチームY応援団の声援を受ける。やはり力が湧いてくる。
Arii Driveのランコースもおなじみだ。きれいな海岸線を走る。脚が回復してきた。MASAさんがつらそうに走っている。全くいつもの走りではない。再び先に行かせてもらう。強豪エイジのゴーイチ君、コーゾー君をパス。両方とも体調が悪いのか全然走れていない。
Arii Driveを折り返するすぐにRIKIさんとすれ違う。もう5分も差がない。どこまで逃げ切れるか。ランに入って脚の疲労・痛みも回復し、キロ5分前後で順調に走れている。このまま最後までいければ3時間30分くらいで走れるかもしれない。Arii Driveを抜け再びQueen Kに出る。
とにかく暑い。湿気は少ないがじりじり暑い。水をかぶりなるべく体温を冷やす。エイドしか人もいない単調な道をひたすら走る。ミリンダとすれ違う。相変わらず飛ぶような素晴らしい走りを見せている。間近で見られてうれしい。リエトがまたヘロヘロと走っている。またランでつぶれたようだ。
ハーフを過ぎ25kmあたりから脚が動かなくなってくる。エナジーラボの手前でついにRIKIさんにパスされる。エナジーラボに入り海に向かって坂を下ると強豪エイジの湯尻さんが歩いていた。脚が痛そう。自分も歩きたくなるくらい脚が疲労してきた。
坂を登りまたQueen Kに入る。この辺りに一番きつく、キロ6分くらいでしか走れていない。エイドごとに全身に水をかぶり、氷をパンツに入れ脚を冷やす。ここからは気合いで走るしかない。
MASAさんもやってきた。かなりつらそう。
リョーコも来た。なんだか楽しそう。
残り5km。この辺りまで来ると「あー、もうすぐ終わるんだなー」という気分になった。この溶岩大地の光景をしっかり目に焼き付けたいと思った。大塚さんがQueen Kにひとりでいた。あとから聞いたが、ここまで歩いてきたとの事。ハイタッチしてゴールに向かう。
コナの街に帰ってきてゴールへと続く道を走る。チームYメンバーも待っていてくれた。最後の花道。両側に出場国の国旗が立てられ、大勢の観衆が大拍手で迎えてくれる。
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そしてゴールゲート。
「Yoshihisa Kanayama, You are an Ironman!」
感極まって涙があふれてきた。
夢にまでみたシーンの中に自分がいる。
ここまで大勢の仲間に支えられてここまでやってきました。
そして本物の感動をもらうことができました。
素晴らしい体験でした。
さらに成長してふたたびこのレースに参加したいと強く思いました。
また一からがんばります。
応援本当にありがとうございました。
ラン:3時間46分06秒
全体:10時間39分46秒(年代別:98位、総合831位)
夢を見続ける力。かなうと信じる力。夢を夢で終わらせなかった。そして、来年も更に大きな夢を見るのだろう。(大塚)
Triathlon “ MONO ” Journalist Nobutaka Otsuka